target trial emulationの限界!?模倣(emulation)が困難な研究デザインを解説

target trial emulationの限界!?模倣(emulation)が困難な研究デザインを解説

【★★☆(中級)】target trial emulationが不可能な研究デザインとは……

2024/1/24

目次
     ランダム化比較試験による薬物治療の有効性検証は、保健当局による医薬品の承認や、診療ガイドラインにおける推奨文の基礎をなす重要なプロセスです。また、薬物治療の有効性のみならず、安全性の検証においてもランダム化比較試験が実施されることがあります。
     例えば、米国食品医薬品局(FDA)が製薬企業に実施を義務付けた心血管リスクに対する血糖降下薬の安全性検証を挙げることができます。血糖降下薬として新規承認を得るためには、プラセボとの非劣性試験を実施し、新結果リスクの比劣性を示す必要がありました(Cefalu, et al.2018; PMID: 29263194/Sharma, et al.2020; PMID: 31992065)
     また、喘息や慢性閉塞性肺疾患に対する長時間作用型β2刺激薬や長時間作用型抗コリン薬の非劣勢検討もまた、安全性検証を目的に試験デザインされていました(Peters, et al.2016; PMID: 27579635/ Stempel, et al.2016; PMID: 26949137/Wise, et al.2013; PMID: 23992515)
     むろん、薬物治療の安全性検討は、倫理的な観点から一般的な優越性検証試験の実施は困難であり、ランダム化比較試験というよりはむしろ、観察研究の知見によるところが大きいと言えます。  また、医薬品の規制当局や公的な学術団体においても、医薬品のリスク・ベネフィトに関する補完的な情報として、観察研究(リアルワールドエビデンス)の創出を強調しています(Frieden.2017; PMID: 28767357/Eichler, et al.2020; PMID: 31574163/Gershon,et al.2021; PMID: 33385220)
     特に近年では、ランダム化比較試験の基本原則を観察データの解析に適用することで、観察疫学の方法論的妥当性を向上させるtarget trial emulationが注目されるようになりました。先日に、記事として取り上げたベンゾジアゼピン系薬剤の中止と死亡リスクの関連を検討したMaustらの研究も、同手法を用いた観察研究です(Maust,et al.2023; PMID: 38117495)
    【参考】ランダム化比較試験を模倣するtarget trial emulation。その方法論的妥当性は?
     しかしながら、実際のランダム化比較試験の結果とtarget trial emulationによる観察研究の結果は、必ずしも一致しないことが知られています(Franklin, et al.2021;PMID: 33327727/ Wang, et al.2023;PMID: 37097356)。  理論上のemulation(模倣)は容易であっても、観察研究でランダム化比較試験を厳密に模倣することは困難な場合も少なくありません。  この記事では、観察研究では模倣が困難なランダム化比較試験の特徴的な研究デザインについて、Suissaによる総説論文(Suissa,2024; PMID: 38225188)を参照しながら、その概要を整理します。

    観察研究では模倣が難しいランダム化比較試験の特徴

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