日本におけるベンゾジアゼピン系薬剤の処方量は、その潜在的な有害事象が注目された2015年以降において、減少傾向にあることが知られています(Okui, et al.2021; PMID: 34946449)。
特に、75歳以上の高齢者におけるベンゾジアゼピン処方の減少割合が大きく、診療報酬の改訂や潜在的不適切処方に対する関心の高まりが、同薬の減処方に繋がっているものと考えられます。
ところが2023年12月に、長期間にわたりベンゾジアゼピン系薬剤を服用している患者において、同薬の使用中止は死亡リスクの増加に関連する可能性を報告したMaustらによる論文が、JAMA Netw Open誌に掲載されました(Maust, et al.2023; PMID: 38117495)。
一般的に、ベンゾジアゼピン系薬剤は、適切な方法で減量すれば、安全に中止できることが多いと認識されていたように思います。ベンゾジアゼピン系薬剤の潜在的なリスクを勘案すれば、むしろ同薬は減処方すべきという考え方が、国際的なコンセンサスと言っても良いでしょう(Pottie, et al.2018; PMID: 29760253)。これまでのコンセンサスを覆すようなMaustらの報告には、小さくない衝撃を覚えます。
今回の記事では、JAMA Netw Open誌に掲載されたMaustらの論文を読み解きながら、ベンゾジアゼピンと死亡リスクの関連性を考察したいと思います。