コホート研究において、解析結果の内的妥当性を高める手段の一つにtarget trial emulationがあります。端的には、目標(target)となるランダム化比較試験(trial)を模倣(emulation)するようにデザイン化した、観察データの分析手法です(Hernán & Robins.2016;PMID: 26994063)。
【参考】ランダム化比較試験を模倣するtarget trial emulation。その方法論的妥当性は?
とはいえ、target trial emulationアプローチと言ってもランダム化を実際に行っているわけではありません。同手法を用いても、交絡バイアスの影響を完全に排除できるわけではないのです。とりわけ、薬物治療介入の継続群と中止群を比較した場合において、target trial emulationによる交絡制御には一定の限界が存在するように思います。
【参考】ベンゾジアゼピン系薬剤を中止すると死亡が増えるって本当!?
そのような中、高齢者を対象とした血管イベントに対するスタチン系薬剤の一次予防効果を検討したコホート研究の結果が報告されました(Mésidor, et al.2024; PMID: 38367659)。
同研究ではtarget trial emulationを用いて解析が実施されたものの、既存の研究報告とは異質な結果が得られました。その異質性の正体とは何だったのでしょうか……。
今回の記事では、感度分析で浮き彫りとなるtarget trial emulationの限界についてご紹介いたします。