ランダム化比較試験の追跡不能例……介入群と対照群で同等の割合ならばバイアスの影響は小さい?

ランダム化比較試験の追跡不能例……介入群と対照群で同等の割合ならばバイアスの影響は小さい?

【★★☆(中級)】追跡不能者の規模感と、ランダム化の保持に与える影響

2024/11/6

 ランダム化比較試験は、介入群と対象群をランダムに割り付けることで、介入以外の予後因子に対してバランシングが行われます。それゆえ、治療効果の推定値に対する内的妥当性が維持され、質の高い検討が可能となります。  しかしながら、ランダム割付後に被験者が脱落すると、2群間の予後因子に偏りが生じることもあります。
 ランダム化比較試験の被験者が脱落することによって生じ得るバイアスは減少バイアス(attrition bias)などと呼ばれ、同バイアスについては過去の記事でも取り上げています。
【参考】ランダム化比較試験における脱落者の偏りは、最終結果にどのような影響を及ぼしますか?
 一般的に、脱落(Dropout)とは、研究に組み入れられたにも関わらず、被験者の同意撤回や、被験者の自己都合による試験の不参加によって、事前の計画通りに研究を完遂できない状態を指します。一方、薬物有害事象など医学的な事由による研究参加の中止はDiscontinueと呼び、Dropoutと区別することが多いと思います。
 ただし、ランダム化比較試験の結果を報告した論文を読むうえでは、DropoutとDiscontinueを明確に区別する必要性は必ずしも大きくはありません。重要なことは、どのような被験者が最終解析から除かれており、それがランダム化の保持にどのような影響を与えているか、研究結果の内的妥当性を脅かす水準にあるかどうかです。つまり、追跡不能者の規模感とランダム化の保持に与える影響を考えるということです。
 今回の記事では、ランダム化比較試験における被験者の脱落について、追跡不能者の存在が、予後因子のバランシングにどのような影響を与えるのかについて考察してみたいと思います。

ランダム化比較試験における脱落状況を振り返る

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