ランダム化比較試験では、一定の割合で被験者の脱落が発生します。脱落(Dropout)とは、研究に組み入れられたにも関わらず、被験者の同意撤回や、被験者の自己都合による試験の不参加によって、事前の計画通りに研究を完遂できない状態を指します。
脱落は、薬物有害事象など医学的な事由による試験の中止(Discontinue)とは異なり、被験者自身に研究参加を妨げる要因が存在します。
ランダム化比較試験において、介入群と対照群で脱落発生割合が同水準であれば、最終結果に偏りを生じる可能性は低いかもしれません。しかし、どちらかの群で、より多くの脱落が生じた場合には、脱落に起因する選択バイアスが生じることもあり得ます。少なくとも、ランダム化の保持に対する不確実性が発生します。
例えば、被験者が何らかの副作用を経験した場合、(医学的事由による中止でなくとも)被験者自らの意志で試験参加を拒むことはあり得ます。介入群で脱落が多い場合には、介入治療の副作用が原因となっている可能性も指摘できるのです。
この場合、脱落してない人で最終解析を行えば、副作用が発現しにくい人だけを選択的に解析対象に含めることになります。
このように、臨床研究からの体系的な脱落によって生じる選択バイアスを減少バイアス(attrition bias)、もしくはDifferential Attritionと呼びます(Nunan, et al.2018; PMID: 29367321)。この記事では、減少バイアスがもたらす研究結果への影響度について考察します。