実臨床におけるプラセボ効果は、薬理学的な作用機序が生み出す薬効と比べても、遜色ない効果量を有することがあります。そのため、患者ごとに最適化したプラセボ効果の利用可能性は、薬物療法を考えるうえで避けて通れない臨床課題と言えるかもしれません(Enck, et al.2013; PMID: 23449306)。
とりわけオープンラベルプラセボは、倫理的な障壁や介入の実行可能性に優れるだけでなく、その臨床的な有用性についても、複数のランダム化比較試験で小さくない効果量が示されています。(Blease, et ai.2016; PMID: 26840547/Charlesworth, et al.2017; PMID: 28452193/Wernsdorff, et al.2021; PMID: 33594150)。
【参考】プラセボと分かってプラセボを飲んでも、有効性が期待できる!?【前編】
【参考】プラセボと分かってプラセボを飲んでも、有効性が期待できる!?【後編】
もし仮に、オープンラベルプラセボに臨床的に意味のある効果が実在するのであれば、プラセボ的な効果を引き起こす真の要因は、必ずしも物理的な「錠剤」ではない可能性を示唆します。つまり、錠剤という物理的な物体は、プラセボ的な効果を引き出す象徴にすぎず、プラセボ効果の発現にとって重要なメカニズムは、極めて心理的な要因であるという仮説です。
実際に錠剤を服用するのではなく、錠剤の服用を想像させることで、プラセボ効果を得ようとする試みは1980年代から行われていました。この記事では、イマジナリー・ピル(Imaginary Pill)、つまり「想像上の薬」がもたらし得るプラセボ効果の可能性について、最新の研究論文をレビューします。