「The powerful placebo」と題されたBeecherによる総説論文が発表されたのは1955年のことでした(Beecher, et al.1955)。以来、半世紀以上にわたって、プラセボ効果は科学的に探究すべき問題として扱われてきました。
プラセボは、ランダム化比較試験の対照治療として用いられるだけでなく、実臨床における治療の文脈でも、決して軽視できない影響力を持っています(Price, et al.2008; PMID: 17550344)。
一般的に、プラセボによる効果、すなわちプラセボ効果を発現させるためには、患者(もしくは被験者)に対して、プラセボを実薬だと思い込ませる必要があると考えられています。それゆえ、患者を欺きプラセボを使用することは、倫理的な観点から現実的ではないとの指摘も根強いものです。
しかし近年、患者を欺かずにプラセボを投与すること、すなわち「これはプラセボです」と開示してプラセボを投与することでも、一定の臨床効果を期待できる可能性が報告されています。
このような、非盲検的プラセボはオープンラベルプラセボと呼ばれます。今回は、オープンラベルプラセボに関する最新知見と実臨床上の活用に関する考察について、前編と後編の2回に分けて整理したいと思います。