ケース・ケース・タイム・コントロール分析とは?

ケース・ケース・タイム・コントロール分析とは?

【★★★(上級)】自己対照デザインにおける時間依存型の交絡に対する配慮

2023/11/1

目次
     高齢者薬物療法において、抗コリン作用のある薬剤(以下、抗コリン薬)は、潜在的な有害事象リスクが高い薬剤だと認識されています(Hanlon, et al.2020; PMID: 32152019/Lockery, et al.2021; PMID: 33754317)
     一方で、抗コリン薬と薬物有害事象の関連性は、主に観察研究の結果に依存しており、両者の因果関係については議論の余地が少なくありません。  抗コリン作用のある薬剤は、一般的に加齢に伴い処方頻度が増加する傾向にあります(Rhee, et al.2018; PMID: 29582410/Álvarez, et al.2019; PMID: 31866817)。そのため、同薬の使用と有害事象の関連性は、単に加齢や加齢に付随する予後因子の変化を反映したものに過ぎない可能性があります。
     そのような中、台湾の保健福祉データベースを用いて、抗コリン薬の使用と心血管イベントの関連性を検討した観察研究の結果が、2023 年 9 月 27 日付で英国医師会誌に掲載されました(Huang, et al.2023; PMID: 37758279)
     本研究では、既存のコホート研究で生じ得る時間非依存型の交絡因子に配慮したケース・クロスオーバー分析をベースに、時間依存型の交絡因子に配慮したコントロール・クロスオーバー分析、さらにはケース・ケース・タイムコントロール分析という3つの手法で抗コリン薬と心血管イベントの関連性を検討しています。
     解析の結果、心血管イベントに対する抗コリン薬のオッズ比(95%信頼区間)は、ケース・クロスオーバー分析において1.86 (1.83~1.90)、コントロール・クロスオーバー分析において1.35 (1.33~1.38)、ケース・ケース・タイムコントロール分析において1.38(1.34~1.42)でした。分析手法によってオッズ比に相違を認めていますが、この差異は配慮された交絡因子の違いを反映しているものと考えられます。
     この記事では、ケース・クロスオーバー分析の概要を整理したうえで、時間依存型の交絡因子に対する調整を可能とするケース・タイムコントロール分析、さらには、両者のデメリットを補完したコントロール・クロスオーバー分析、並びにケース・ケース・タイムコントロール分析について解説します。

    ケース・クロスオーバー分析とは

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