EBM(Evidence-Based Medicine)はエビデンスそのもののことではなく、患者の病状と周囲を取り巻く環境、患者の好みと行動、医療者の臨床経験を組み合わせた総合的表現です(Haynes,et al.2002; PMID: 12052789)。しかし、これらの4要素を適切に統合することは、想像以上に難しい作業です。
ひとたびエビデンスに関心が向いてしまえば、僕たちは統計学的なデータに依拠した臨床判断を行いがちです。客観的事実(エビデンス)に向けられた視線を25%にとどめる一方、残りの3要素に関心の75%を振り分け、平均的な統合を行うことは、現実的に不可能だと言っても良いでしょう。
Shared Decision MakingやNarrative Based Medicine、患者中心の医療といった概念の登場は、EBMにおけるステップ4の実効性が乏しいことの傍証なのかもしれません。
今回の記事では、EBMの実践における6つの潜在的なバイアスを解説した上で、4要素が統合困難な理由を考察します。