がん患者では、医療に対する依存度が高く、医療サービスを頻回にわたって利用することになります。一方で、余命が限られている末期がん患者においては、頻回にわたる医療との接点が、患者本人の個人的な時間を奪う側面は否定できません。
入院期間のみならず、検査や投薬に必要な時間、診察の待ち時間など、その時間的損失は大きく、近年では治療の時間毒性(Treatment-related time toxicity)として概念化されています。
がんの治療をめぐる意思決定においては、当該治療の有効性や安全性、治療に関わる医療費等について、医療者と患者およびその家族の間で十分な話し合いがなされることでしょう。しかし、患者が治療に費やす時間的損失について検討されることは希だと思います。
今回の記事では、がん治療の時間毒性について解説し、がん患者と医療サービスの接点がどのように変化していくのか、その軌跡に関する最新の研究データをご紹介します。