2023年10月26日付のJAMA Netw Open誌に、セフトリアキソンとランソプラゾールの併用投与に関する衝撃的な論文が掲載されました(Bai, et al.2023; PMID: 37883084)。この論文は、カナダのオンタリオ州にある13の病院施設で行われたコホート研究研究の結果を報告したものです。
この研究では、セフトリアキソンとプロトンポンプ阻害薬(PPI)による治療を受けた31,152人が対象となり、PPIとしてランソプラゾールを使用していた3747人と、その他のPPIを使用していた27405人が比較されています。
解析の結果、心室性不整脈または心停止の発症は、ランソプラゾール使用群で126人(3.4%)、その他のPPI使用群で319人(1.2%)に発生していました。また、院内死亡はランソプラゾール群で746人(19.9%)、その他のPPI群で2762人(10.1%)に発生しました。
傾向スコアを用いて交絡補正した結果、ランソプラゾールの使用における調整リスク差は、心室性不整脈または心停止で1.7%(95%信頼区間1.1~2.3)、院内死亡で7.4%(95%信頼区間6.1~8.8)と、統計学的にも有意に増加しました【表】。
【表】セフトリアキソンとPPIの併用に関連した入院転帰(Bai, et al.2023; PMID: 37883084よりMedical Writing Works作成)
心室性不整脈または心停止におけるNNH(number needed to harm:害必要数)は、58.8(95%信頼区間43.5~90.9)と見積もられており、この結果が真実なのであれば、PPIの院内採用からランソプラゾールを外すべきと結論することもできそうです。
一方、この解析結果は観察研究に基づくものであり、セフトリアキソンとランソプラゾールの併用に関連した健康リスクを、どの程度まで警戒すべきかについては議論の余地も大きいでしょう。そもそも、このリスク増加は薬物相互作用によるものなのでしょうか。
この記事では、セフトリアキソンとランソプラゾールの併用と不整脈や心停止の関連性について、生物学的な機序から疫学的な関連性まで、最新の論文をレビューしながら考察をします。