アルツハイマー病治療薬については、2021年にもアデュカヌマブが迅速承認されています(Alexander, et al.2021;PMID: 34320282)。しかし、同薬の有効性を検証したEMERGE試験およびENGAGE試験の中間解析(無益性解析)において、一次エンドポイントであるCDR-SBの改善は見込めないと判断され、FDAは2019年3月に両試験の中止を発表しています。
ところがその後、バイオジェン社から提出された追加データに基づき、同薬の審査期間が延長されることになります。再審議の結果、一転して迅速承認に至りました。
アデュカヌマブの有効性については、中間解析までに得られたデータをまとめた論文が2022年に報告されており、EMERGE試験ではCDR-SBの改善を認めた一方で、ENGAGEでは、統計的有意な差は示されませんでした(Haeberlein, et al.2022; PMID: 35542991)。FDAによるアデュカヌマブの迅速承認は、主にアミロイド班の減少という探索的な代用のエンドポイントによってなされたといっても良いでしょう(761178Orig1s000 - Accessdata.fda.gov)。
本件に関して、ジョンズ・ホプキンス大学のAlexanderらは、アデュカヌマブの事後解析に基づく承認審査は、科学的客観性を欠くものであると批判的な見解を示してしています(Alexander, et al.2021; PMID: 33783469)。
FDAの迅速承認を得た薬剤からと言って、必ずしも有効性を裏付ける質の高いエビデンスが存在するわけではありません。薬事承認のために必要なデータ収集を目的とした臨床試験の中でも特に重要な研究をピボタル試験(pivotal trial)と呼びますが、この記事では、FDAによる新薬の承認とピボタル試験の結果についてレビューします。