2023年に、新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2)の接種と生存状況の関連性を検討した観察研究の結果が報告されました(Pietrzak Ł, et al.2023;PMID: 36876868)。
ポーランドで行われたこの研究では、同国民36,362,777人分のデータが解析されました。解析対象者のうち39.71%にあたる14,441,506人が新型コロナウイルスワクチンを規定回数にわたって接種し、39.11%にあたる14,220,548人が同ワクチンを全く接種していませんでした。
解析の結果、総死亡に対する新型コロナウイルスワクチンの週平均有効割合は92.62%であり、80歳以上の89.08%から5~17歳の100%までの範囲でした。全年齢層における人口10万人あたりの年間推定死亡率は、ワクチンの完全接種群の43.76人と比べて、未接種群では447.9人と、10倍以上の差を認めました(P <0.001)
Pietrzakらが報告したポーランドの研究結果は、新型コロナウイルスワクチンを接種することで、総死亡のリスクが1/10になる可能性を示唆しています。有効割合が100%であることに加え、10万人当たりの推定死亡率に10倍以上もの差を認めるという結果は、医学的介入の効果量としては極めて大きなものです。
しかし、新型コロナウイルスワクチンの有効性を検証したランダム化比較試験において、高い感染予防効果を示した一方で、死亡リスクが1/10になるといった統計データは得られていません。
今回の記事では、総死亡に対するワクチンの効果を観察研究で検討する際に問題となる、healthy vaccinee effectについて、Pietrzakらの研究結果に対するレター論文を紐解きながら解説します。