SGLT2阻害薬は尿路感染症のリスクを増加させますか?

SGLT2阻害薬は尿路感染症のリスクを増加させますか?

【★☆☆(入門)】SGLT2阻害薬の尿路感染症リスクと実務上の対応

2024/1/17

目次
     2014年にイプラグリフロジンが発売されて以降、SGLT2阻害薬は6成分が薬価収載され、2型糖尿病患者における血糖値管理のみならず、心血管疾患や慢性腎臓病のリスク管理に広く処方されるようになりました。
     日本における糖尿病治療薬の処方動向を調査した研究によれば、2010年代の初頭ではDPP4阻害薬メトホルミンの処方シェアが圧倒的でした(Iketani&Imai,2023; PMID: 37005303)。しかし、2014年から2020年にかけて、SGLT2阻害薬の処方量(1000人当たりの月間処方量)は80倍以上も増加しています。
      SGLT2阻害薬の処方トレンドは、今後も継続するように思われ、糖尿病における血糖値の管理に限らず、慢性疾患の予後に対する管理薬として、スタチン系薬剤と同等の地位を確立するものと考えています(Braunwald,2022: PMID: 34741610)
     一方、SGLT2阻害薬が発売された当初においては、その有害事象として尿路感染症に対するリスクが指摘されていました。実際、SGLT2阻害薬の製剤添付文書にも以下のような記載があります。
    尿路感染及び性器感染を起こし、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症等の重篤な感染症に至ることがある。尿路感染及び性器感染の症状及びその対処方法について患者に説明すること(フォシーガ錠5mg/フォシーガ錠10mg 製剤添付文書2023年 11月改訂:第5版)
     SGLT2阻害薬は尿糖の増加をもたらすため、尿中のブドウ糖を栄養素として、尿路の細菌増殖を促すのではないか……などといった仮説が提唱されていました。
     一方で、糖尿病患者では頻回に尿検査を行うことが想定されます。スクリーニングの頻度が高いことは、細菌尿や尿路感染症の過剰診断につながるリスクが高まるため、SGLT2阻害薬と尿路感染症リスクの関連性には、一定の割合で発見兆候バイアスが存在することになります。
     また、糖尿病の患者では潜在的に尿路感染症を発症しやすいことが知られています。その有病割合は約10%であり、糖尿病患者に対して無作為に尿検査を行った場合、単純に10人に1人は尿路感染症と診断される可能性があります(Salari, et al.2022; PMID: 35123565)
     そのため、SGLT2阻害薬が尿路感染症の原因なのか、SGLT2阻害薬を飲むような人で尿路感染症を有病している人が多いのか、観察的な研究結果から両者を判別することは困難です。
     この記事では、SGLT2阻害薬と尿路感染症の関連性について、これまでに報告されている論文をレビューし、その関連性を考察したうえで実務上の対応を整理します。

    SGLT2阻害薬と尿路感染症の関連性

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