反ワクチン論の中でも、とりわけ科学的根拠の乏しい主張の一つが、ターボがんと呼ばれる現象です。ターボがんとは、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを接種することによって、がんの進行が加速する現象を指す言葉です。とはいえ、医学的に定義された言葉ではなく、PubMedで「vaccine turbo cancers」で検索しても、関連すると思われる学術論文は見つかりません。
ターボがんを正当化する論者によれば、ワクチンの作用によって免疫機能が抑制され、がん細胞が爆発的に増加し、通常ではありえない速度でがんを発症すると指摘されています。ターボがんという専門用語は無くとも、ターボがんという現象は存在するかもしれませんが、今のところ、現代医学はそのような現象を救ってはいないようです(Public Health Communications Collaborative.2023)。
新型コロナウイルスワクチンを接種して免疫力が下がるのであれば、現象としては免疫不全のような状態なので、がんに限らず様々な感染症に罹患するはずです。むろん、同ワクチンにそのような事実は報告されていません。
そのような中、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン接種と、がんによる超過死亡の関連性を検討した研究論文が、オープンアクセスジャーナルの「Cureus」誌に掲載されました。
この論文では、新型コロナウイルスワクチンの集団接種後に、がんによる超過死亡を認めたと報告されていました。今回の記事では、同論文を解説しながら、mRNAワクチンの接種と、がんによる超過死亡の関連性を考察します。