世界保健機関によれば、全世界で5,500万人以上が認知症を患っており、毎年1000万人が、新規に認知症を発症していると見積もられています(世界保健機関.2021)。
世界的に見て、認知症は死亡原因の7位に位置しているにも関わらず、その治療薬は過去20年間において、著しく治療成績が低く、認知症の進行を抑止するための治療選択肢は極めて限定的です(Gauthier S, et al. 2016;PMID: 26710325)。
一方、認知症の発症に対する修正可能な危険因子に関するエビデンスも報告されています(Livingston G, et al.2024;PMID: 39096926)。とりわけ糖尿病は、認知症の発症と関連することが知られており、性別にかかわらず、認知症の発症リスクを60%増加させます(Chatterjee S, et al.2016;PMID: 26681727)。
糖尿病はまた、アルツハイマー型認知症のみならず、血管認知症の発症リスクを高めることも知られており、糖尿病の適切な治療は認知症の発症リスクを低下させる可能性も示唆されてきました。
今回の記事では、糖尿病と認知症の関連性を整理したうえで、認知症の発症リスクに対するSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の有効性を比較したコホート研究(Shin A, et al.2024;PMID: 39197881)の結果を紐解きます。