僕たちの現実世界に対する認識は、(ごく当たり前のことですが)主観的な経験の内にあります。経験そのものを客観的に描写し、他者と共有することは不可能であることからも、このことがよく理解できると思います。本質的には言語活動によってでさえ、他者を理解することは困難です。
一般的に、経験が否定的なものであった場合には、経験に関わる情報もまた否定的に解釈しがちです。明確に否定的な経験でなくとも、人は曖昧な情報に対して、その時々の心理状態で否定的に捉えることは多いと思います。
BeckとClarkは、曖昧な情報に対して選択的に否定的な解釈を行う傾向性を解釈バイアス(Interpretation bias)と呼びました(Beck&Clark.1988;DOI: 10.1080/10615808808248218)。
日常で経験する生活事象の多くは「曖昧さ」に満ちています。明日の天気でさえ、雨が降るかどうかは、降水確率という不確実性でしか表現できないものであり、このような曖昧さや不確実性は「リスク」と表現されるものと、ほとんど同義であると言っても良いでしょう。
この記事では、解釈バイアスと心理的な健康状態の関連性や、医療者がエビデンスを活用する際における解釈バイアスの影響について考察します。