健康増進に役立つ科学的根拠を有するとして、消費者庁長官から認可された食品を特定保健用食品と呼びます。ただし、特定保健用食品の認可には厳しい審査が必要であり、食品製造業者にとっては開発コストの増大が障壁となっていました。
そのような中、食品の機能性を分かりやすく表示した製品の選択肢を増やし、消費者の食品購買に関わる意思決定の支援を目的とした機能性表示食品制度が、2015年4月より開始されました(消費者庁.食品表示企画課)。
機能性表示食品とは、「おなかの調子を整える」「脂肪の吸収を抑える」など、健康状態に対する機能性を表示した食品群です。食品事業者は、安全性と機能性に関する科学的根拠や、申請に必要な必要書類を、食品の販売前に消費者庁長官に届け出れば、製品パッケージに機能性を表示できるようになりました。
食品事業者においては、製品の開発コストを抑えられることに加え、審査が不要な届け出制が採用されたことで、販売計画やマーケティング戦略を立てやすくなりました。そのため、機能性表示食品の届け出件数は右肩上がりで増加し、7年後の2022年5月には約5000件に達しています。この増加率は、特定保健用食品(30年間で約1000件の登録)の20倍に匹敵します(日経バイオテク.2022)。
このような状況の中で、食品分野に特化した医薬品開発業務受託機関(CRO)が、エビデンスの創出に大きな役割を担うようになってきました。一方で、このような事業者が手掛ける研究や、その結果を報告した論文の質や妥当性については議論の余地も少なくありません。
【参考】不適切な多重検定(αインフレーション)を論文情報から読み解くコツ
この記事では、機能性表示食品制度の背景を整理したうえで、機能性表示食品に関するエビデンスの妥当性について考察します。