某お笑いコンビがMCを務めるテレビ番組において、薬剤師に対する不適切な発言があったというニュースが関心を集めました。同テレビ番組の公式ウェブサイトにおいて、以下のような謝罪文が掲載されるなど、その波紋は小さくない広がりを見せています。
2月28日(水)の放送における薬剤師の業務に関する発言で、一部不適切な内容がありました。窓口で薬剤師が症状等の確認をすることは、法律(薬剤師法)に基づいた適正な業務であることなど、薬剤師に関する番組側の認識が不足していました。また医師と薬剤師との関係について、薬剤師の方々および関係する皆様にご不快な思いをおかけした内容もありました。謹んでお詫びいたします(ABCテレビ/Yahoo!ニュース)。
このような状況の中で、薬剤師の処方権に関するSNS投稿も活発化し、一部の論者においては、「薬剤師不要論(もしくはAi代替)」か「薬剤師の処方権獲得」か、といった短絡的な二元論も見受けられます。
一方で、一定程度の職業上のアイデンティティ形成が患者ケアに有益な影響を与える可能性も報告されています(Gregory&Austin,2019; PMID: 31320959)。
「薬剤師」などという国が勝手に作った資格に誇りを持つのはやめよ……という指摘も分からぬではありません。しかし、GregoryとAustinが指摘するように、薬剤師という職業に対する一定の誇りや自信がないことは、臨床アウトカムに悪影響を及ぼす可能性もあり、筆者は安易に是認できません。
また、筆者のような考え方は、「日本の薬剤師に独特のもの」といった趣旨の指摘も見受けられましたが、それは明らかに素人考えだという指摘を返していきます。
今回の記事では、海外におけるclinical pharmacist(以下、臨床薬剤師)という職種と、その職能に関する文献を紹介し、日本の薬剤師との職能上のギャップを考察したいと思います。