保険調剤の現場において、鎮咳薬(咳止め薬)の入手が困難な現状は、マスメディアでも報道されるようになりました(NHK.2023年10月19日)。
一方で、長引く咳の症状に対して、鎮咳薬の効果は極めて限定的(あまり効果が期待できない)であることが知られています(Eccles.2002; PMID: 12099783)。
ただし、咳の症状に対して有効性が期待できないといっても、現実的には薬を飲んだことによる安心感から、日常生活における不安や苦痛が和らぐことは多いはずです。いわゆるプラセボ効果の影響かもしれませんが、実際のところ鎮咳薬に限らず、OTC医薬品の有効性の多くはプラセボ的な何かです(青島.2022)。
大事なことは、薬に効果があるかないか、ということよりはむしろ、薬をどのように説明したかで、その効果がほとんど決まってしまうという事実でしょう。つまり、薬に関する「語り」もまた、薬の効果の一つの要素なのです。だからこそ、「語り」のためのロジックが重要ですし、ロジックの妥当性を裏付けるエビデンスが必要となります。