高齢者に対する薬物療法において、多剤併用状態は珍しくありません。一般的に、5種類以上の薬剤を服用している高齢者の割合は40%を超えると言われています(Anderson TS, et al.2020;PMID: 32091534/Linsky A, et al.2019;PMID: 31430394)。
とりわけ降圧薬は、高齢者であっても、その投与が推奨されており、多剤併用の起因薬剤となりやすいように思います(Muntner P, et al.2018;PMID: 29133599)。
むろん、降圧薬による高血圧治療は、心血管予後の改善に対する質の高いエビデンスが豊富です。一方で、降圧薬の有効性を検証したランダム化比較試験では、壮健な高齢者が組み入れられることが多く、虚弱高齢者を対象とした介入研究は極めて限定的です(Dallaire-Théroux C, et al.2021 ;PMID: 34807261)。
高齢者においては、起立性低血圧や、血圧低下に伴う転倒、骨折、電解質異常、薬物相互作用など、潜在的な有害事象リスクに対する懸念は少なからず存在します (Butt DA, et al.2013;PMID: 23612794)。実際、虚弱高齢者に対する降圧療法は、生命予後の悪化と関連する可能性も報告されています(Liu X, et al.2023;PMID:36826917/Benetos A, et al.2015;PMID: 25685919)。
そのような中、介護施設に居住している高齢者を対象に、降圧薬の減薬と認知機能の関連性を検討したコホート研究の結果が、JAMA Intern Medの電子版に2024年9月23日付で掲載されました(Jing B, et al. 2024;PMID:39312220)。
今回の記事では、高齢者における血圧管理と認知機能の関連性を整理したうえで、降圧薬の減薬と認知機能の関連性について、同論文を批判的にレビューしてみたいと思います。