プロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibitor:以下PPI)は不快な消化器症状の緩和効果に優れる一方で、その投与中止においては症状の再燃リスクが懸念され、漫然と処方されやすい薬剤の一つです(Sigterman, et al.2013; PMID: 23728637/Reimer, et al.2009; PMID: 19362552)。
治療効果を直接的に実感しやすく、なおかつ薬剤を中止すると症状が容易に再燃しうるという効果特性は、ベンゾジアゼピン系薬剤のそれと良く似ています【表1】(Kinoshita, et al.2018;PMID: 29605975)。
【表1】PPIとの関連性が示唆される代表的な有害事象(Kinoshita, et al.2018;PMID: 29605975よりMedical Writing Works作成)
とは言え、PPIの減処方がもたらす臨床的なベネフィットについては良く分かっておらず、介入の有効性を報告した研究も限定的です(Wilsdon, et al.2017; PMID: 28220380)。 介入を行っても、症状の再燃によりPPIが再処方される人も多いでしょう。したがって、長期的にPPIの減薬が成功するかどうかについても明確ではないのです。
そのような中、PPIの減処方介入の効果を差分の差分法 (Difference in differences)という手法で検討した研究結果がBMJ誌に掲載されました。
今回の記事では、BMJ誌に掲載されたPPI減処方に関する研究の概要をご紹介しながら、いわゆる潜在的不適切処方と呼ばれる薬剤群の減処方介入について考察します。