潜在的不適切処方の代表的なスクリーニングツールの一つ、Beers Criteriaの日本語版が改訂されます。医学書院さんより、2024年2月刊行予定の「これだけは気をつけたい!高齢者への薬剤処方 第2版」という書籍に収載されるとのことです。編著はもちろん今井博久先生です。実は、僕も執筆に関わらせていただきました。
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潜在的不適切処方やポリファーマシーに関連した問題は、日本のみならず世界的にも注目を集めました。2017年には世界保健機関(WHO)が、ポリファーマシーの認識や予防、そして対処を行うための取り組みを策定しています。
「Medication Without Harm aims to reduce severe avoidable medication-related harm by 50%, globally in the next 5 years.」と明記されているように、WHOが掲げる目標は、回避可能な重度の薬剤関連問題を5年の間に50%削減することでした。
このような背景を受け、ポリファーマシーを主題とした学術論文は、指数関数的と言っても良いほどに報告数が増加しました。Kellerらのレビューチームが文献検索を行ったところ、ポリファーマシーやポリファーマシー介入に言及した論文は、2017年で5000件でしたが、2021年には10000件に達しました(Keller, et al.2024; PMID: 38198136)。
しかしながら、Andersonらが2019年に報告したシステマティックレビューが明らかにしたことは、ポリファーマシーに対する介入の限定的な効果です。このレビューでは、医療リソースや死亡リスクにおいて、意味のあるアウトカムを示唆する一貫したエビデンスは欠如していると結論づけています(Anderson, et al.2019; PMID: 31612924)。
この記事では、ポリファーマシー介入に関するエビデンスを、Kellerらのシステマティックレビューに基づきアップデートし、ポリファーマシーと向き合うための方法論について、あらためて整理します。