サンシシ(山梔子)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木であるクチナシ(梔子)の果実を乾燥させた生薬です【図1】。
【図1】クチナシの花(Wikipediaより引用)
ゲニポシドやクロシンと呼ばれる化学成分が含まれているサンシシは、神経や循環器、消化器に関わる健康状態に有益な影響を与える可能性や、肝臓の保護作用、抗うつ作用、抗炎症作用などが知られていました(Chen,et al, 2020;PMID: 32311486)。
サンシシは、日本で承認された一般用漢方製剤294処方のうち、22処方に配合されています。サンシシを含む代表的な漢方製剤として、加味逍遙散、防風通聖散、辛夷清肺湯、五淋散などを挙げることができ、OTC医薬品として購入できる漢方製剤も少なくありません。
ところが2018年2月、厚生労働省はサンシシを含む医薬品の医薬品にいて、「使用上の注意」の改訂を発出しました(薬生安発0213第1号)。
当然ながら、この注意喚起はOTC医薬品にも適用され、製剤添付文書の「相談すること」の項目に「腸間膜静脈硬化症」に関する事項と、「長期連用する場合には、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること」の文言が追記されました(PMDA.2018)。
例えば、「クラシエ」漢方加味逍遙散料エキス顆粒の添付文書には以下のような記載があります。
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けてください。 [症状の名称:症状] 肝機能障害:発熱,かゆみ,発疹,黄疸(皮膚や白目が黄色くなる),褐色尿,全身のだるさ,食欲不振等があらわれる。 腸間膜静脈硬化症:長期服用により,腹痛,下痢,便秘,腹部膨満等が繰り返しあらわれる。 5.長期連用する場合には,医師,薬剤師又は登録販売者に相談してください (「クラシエ」漢方加味逍遙散料エキス顆粒より一部抜粋)
この記事では、サンシシを配合した漢方薬との関連性が疑われている腸間膜静脈硬化症について解説し、サンシシを配合した漢方製剤の長期連用に関するエビデンスと、販売対応のロジックを整理します。