新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は、僕たちの日常生活を一変させるとともに、ワクチンに対する否定的な価値観と、その公衆衛生上の課題を浮き彫りにさせました。
同ウイルスワクチンは、方法論的な妥当性に優れたランダム化比較試験において、極めて大きな効果量が示されたにも関わらず、少なくない人たちがワクチン接種をためらい、このうちの幾人かはワクチン接種に対して否定的な感情を抱くに至りました。
むろん、ワクチンのリスクとベネフィットのバランスは、個別の状況において熟慮されるべきでしょう。一方、反ワクチン感情の広まりは、集団免疫の獲得、すなわち公衆衛生の向上を阻害する要因となり得ます(Carey,2022; PMID: 35115678)。
反ワクチン感情は、新型コロナウイルスのパンデミック以前にも存在していました。しかし、ソーシャルネットワークサービス(SNS)が普及した現代社会において、反ワクチン感情の伝播速度と規模は以前と比較にならないほど増大しています。
さらに、反ワクチン感情は特定の政治的思想と融合することも少なくありません。政治思想が多くの人の感情を揺さぶるという意味において、公衆衛生上の脅威と言えるかもしれません。
この記事では、反ワクチン感情を抱く人の特徴や、特定の政治思想との結びつき、人が反ワクチンに傾倒してしまうプロセスに関する論文をレビューします。