SNS(X)上で、「妊婦のアセトアミノフェンで児の注意力低下」という記事の内容に注目が集まっていました。
同記事は、妊娠中のアセトアミノフェン使用と、出生児における注意力低下の関連性を検討したIllinois Kids Development研究(Woodbury, et al.2024; PMID: 38199313)の概要を紹介したものです。
Illinois Kids Development研究(以下、IKIDS)は、米国イリノイ州で実施されたコホート研究であり、記事で紹介された論文では、妊娠第Ⅱ期におけるアセトアミノフェンの使用が、幼児期の注意力の問題に関連している可能性を報告していました。
一般的に、アセトアミノフェンは妊娠中でも安全に使える解熱鎮痛薬として認識されており、その処方頻度も少なくないと思います。欧米では、妊娠女性の半数以上がアセトアミノフェン(もしくはアセトアミノフェンを含有している医薬品)を少なくとも1回、服用した経験があると報告されています(Brandlistuen, et al.2013; PMID: 24163279/Ji, et al.2018; PMID: 29970852/Thorpe, et al.2013; PMID: 23893932)。
一方で、妊娠中におけるアセトアミノフェンの安全性に関する介入研究は限定的であり、胎児に対する同薬の影響は不明確との指摘も可能でしょう。
実際、妊娠中のアセトアミノフェン使用と、胎児の神経発達アウトカムの関連性については、これまでにも数多くの研究が報告されており、リスク増加と関連する可能性も指摘されていました。
ただし、一連の観察研究においては、交絡をはじめとした様々なバイアスの影響が軽視できず、両者の関連性について一貫した結論は得られていませんでした(Masarwa, et al.2018; PMID: 29688261/Masarwa, et al.2020; PMID: 31916282)。
今回の記事では、WoodburyらによるIKIDSの解析結果を批判的に吟味し、妊娠中のアセトアミノフェンの使用と、出生児の神経発達アウトカムの関連性を考察してみたいと思います。