高齢化が進む先進諸国では、認知症患者も増加しており、2015年の推計では世界中で、約4,700 万人が認知症を患いながら生活をしていると見積もられています。この有病者数は2030年に7500万人、2050年に1億3500万人に達すると予測されており、治療に関わる医療コストは2兆ドルまで増加すると見込まれています(Rakesh, et al.2017; PMID: 28815009)。そのため、認知症の予防や早期発見に対する関心は日増しに高まっているといえるでしょう。
一方で、認知症の発症メカニズムは極めて多因子的であり、発症に関連する因子も膨大です。認知症を予防するためには、複数の要因を同時的にコントロールしなければならず、その複雑さは感染症を予防することとは桁違いです。この記事では、認知症の予防に対する有効性を検証した主要なランダム化比較試験を整理し、その効果や日常生活における影響等について考察したいと思います。