2023年7月、欧州医薬品庁(EMA)は、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドとリラグルチドについて、自傷・自殺企図リスクとの関連性を精査すると発表しました。
本発表は、アイルランドの医薬品規制当局に報告された、3件の当該症例がきっかけとなっています。同様の可能性が考えられる150件の報告について、あらためてレビューすることになったわけです。
GLP-1受容体作動薬は、糖尿病患者の血糖値や心血管リスクの管理だけでなく、近年では体重の管理を目的として、肥満症の治療に臨床応用され始めています。
体重減少に対するGLP-1受容体作動薬効果は、リラグルチドで平均4~7 kg、セマグルチドで平均9〜16㎏です(Taha, et al.2022; PMID: 35624390)。
また、リラグルチドの投与を受けた人の50%で5%以上の体重減少を達成し、セマグルチドの投与を受けた人の50%で10〜15%の体重減少を達成することが報告されています(Taha, et al.2022; PMID: 35624390)。
一方、抗肥満作用が中枢神経を介した食欲抑制に起因する場合、精神医学的な安全性に懸念が生じ得ます。今回は、GLP-1受容体作動薬と精神疾患や自殺企図リスクの関連性についてレビューします。