企業の価値を見積もる方法論は多岐にわたります。ただ、市場参加者における秩序ある取引が成立していると仮定した場合、上場企業における「株価」は現時点における企業の公正な価値と一致するはずです。その意味で、株価は企業価値を把握するための指標となります。一般的に、時価総額(株価×発行株式総数)は会社の規模及び企業価値の指標として受け入れられていることからも、株価は一定の水準で企業価値を反映しているものと考えられます。
調剤事業を展開する企業の中にも、東京証券所に上場している会社があり、その売上規模の国内首位はアインホールディングスです。同社の株価は2023年2月22日の終値で5550円であり、その時価総額は196,627百万円です。また、売上規模で国内2位の日本調剤株式会社の株価は1,162円、その時価総額は37,240百万円です。
会社の規模という意味では、アインホールディングスと日本調剤で大きな差があり、株価や時価総額で企業価値を比較することは難しいように思います。ただ、PERやPBRといった株価指標を確認すると、両者の間には大きな差異を認めます。
株価指標上、市場で評価されている企業価値は、日本調剤と比べてアインホールディングスの方が高いことを示しています【表1】。PBRが1倍を割れているということは、会社の純資産よりも企業価値が低く評価されているということであり、投資家は同社の成長性になんら期待感を抱いていないことを端的に示しています。

【表1】株価および株価指標の比較(Yahoo!ファイナンス、及び会社四季報よりMedical Writing Works作成)
この記事では、【表1】に示した株価指標について概説し、アインホールディングスと日本調剤の、株式市場における価値相違の要因を分析してみたいと思います。