抗うつ薬は世界的にも処方頻度の高い薬剤の一つです。米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)によれば、年齢とともに抗うつ薬を服用している人が増加し、60歳以上の約20%が、過去30日以内に抗うつ薬を服用していました(NCHS Data Brief No. 377, September 2020)【図1】。
とりわけ選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、他の薬剤クラスと比較して優れた忍容性を有すると認識されていることも多く、その処方頻度も増加傾向にあります(Cipriani, et al.2018; PMID: 29477251/Luo, et al.2020; PMID: 32116850/Bogowicz, et al.2021; PMID: 33985965)。
一方で、SSRIの薬物有害事象として出血リスクは軽視できません。例えば、セルトラリンの製剤添付文書には、特定の背景を有する患者に関する注意の項目に「出血の危険性を高める薬剤を併用している患者、出血傾向又は出血性素因のある患者」との記載があります。また、出血リスクの観点から、ワルファリンとセルトラリンは併用注意に該当しています。
SSRIは血小板の活性化を阻害する可能性が指摘されており、それゆえ出血リスクを高めると考えられてきました。しかし、SSRIと抗凝固薬と併用されるケースは決して少なくありません。この記事ではSSRIの出血リスクと、抗凝固薬との併用における留意事項を整理します