高齢者薬物療法において、処方内容に対する適正化介入の実効性はあまり明確ではありません(Rankin, et al.2018; PMID: 26866421)。虚弱(フレイル)高齢者の割合が高いと考えられる介護施設セッティングでは、処方適正化介入の実効性を検討するための研究デザイン、介入手法、アウトカム設定に一貫性がなく、メタ分析さえできないという現実があります(Alldred, et al.2016; PMID: 26866421)。
一方、2019年に報告されたシステマティックレビュー・メタ分析では、介護施設居住者に対する薬剤師主導の介入で、被験者の転倒回数が0.50回(95%信頼区間0.21~0.79)、統計学的にも有意に減少するという結果でした(Lee, et al.2019; PMID: 31465121)。なお、このレビューの組み入れ基準となった薬剤師介入は、薬剤レビュー、教育的介入、多職種との連携介入でした。
ただし、転倒回数についてメタ分析された研究は2件のみであり、このうち転倒件数を一次アウトカムに設定していた研究は、Frankenthalらのランダム化比較試験だけでした(Frankenthal, et al.2014; PMID: 25243680)。この研究では、STOPP/START criteriaに基づく不適切処方のスクリーニング介入が実施されており、薬剤レビューの実効性を評価した研究とは言い難いように思います。
そのような中、BMJ誌に介護施設居住者を対象に、転倒リスクに対する薬剤師介入の有用性を検証したクラスターランダム化比較試験の結果が報告されました(Holland, et al.2023; PMID: 36787910)。この記事では、同研究の概要と結果をご紹介したうえで、高齢者の転倒を予防する上で有用な介入要素を考察してみたいと思います。