便秘症の治療薬は、ジフェニルメタン化合物(ビサコジル等)や、アントラキノン系(センノシド)に代表される刺激性下剤と、酸化マグネシウム等に代表される非刺激性下剤に分類することができます。
日本では、2010年以前において久しく便秘薬の新規承認はなされていませんでした。しかし、2012年にルビプロストン、2017年にリナクロチド、2018年にエロビキシバット、およびマクロゴール4000(ポリエチレングリコール)が発売され、治療薬の選択肢が大きく広がることになります。
一方、酸化マグネシウム製剤は投与量調整の簡便さ、価格の安さなどから未だ広く用いられている便秘薬の一つです。2013年とやや古い推計ですが、日本においては約1,000万人が酸化マグネシウム製剤を使用していたそうです(PMDA.2015)。
酸化マグネシウムは胃内で胃酸と反応したのち、小腸で重炭酸マグネシウムまたは炭酸マグネシウムとなります。これらの成分は腸管でほとんど吸収されず、浸透圧の高い管腔内環境を作りだし、便の軟化や腸内容物の膨張による機械刺激などが緩下作用をもたらすと考えられています(Mori, et al.2021; PMID: 33525523)。
この記事では、僕たちにとって極めて身近な便秘薬、酸化マグネシウムの有効性や安全性について、最新の研究論文をレビューしてみたいと思います。また、発生頻度が極めて低い有害事象の潜在リスクを、具体的にどのように評価すれば良いのか、その手順も解説します。