EBM(Evidence-based medicine)は、➊疑問の定式化、➋情報収集、❸情報の批判的吟味、➍情報の患者への適用、➎➊~➍のフィードバック という5つのステップで構成される医療者の行動スタイルです。EBMの実践において、とりわけ重要なステップが➊疑問の定式化です。
「論文の検索がうまくできない……」といった悩みの多くは、適切な仕方で解決すべき問題点を抽出できておらず、PICOの形式で疑問を定式化できていないことが原因だと思われます。
臨床で遭遇する疑問は、大きく背景疑問と前景疑問に分けることができます。前者は学術的前提に関する疑問であり、端的には「自分が知らないだけで世の中においてはすでに定説となっている事柄」に対する疑問です。背景疑問の端的な例が専門用語の定義を問う疑問でしょう。
一方で、前景疑問とは、「個別の臨床症例における将来に起こり得る出来事」に対する疑問です。降圧薬を服用した50代の男性において、脳卒中の将来発生率はどれくらい変化し得るのか?といった疑問がその典型例でしょう。
【図1】背景疑問と前景疑問(Medical Writing Works作成)
EBMは、前景疑問を解消するためのツールであり、臨床症例から前景疑問を的確に抽出し、PICOと呼ばれるフォーマットで定式化する作業から始まります。精度の高い前景疑問は、①どのような患者に(Patient)対して、②どのような評価・治療を行うと(Intervention)、③何と比較して(Comparison)、④どのような結果になるか(Outcome)? という4つの要素を含んでおり、PICOとは4要素の頭文字をとったものです。
【図2】前景疑問を構成する4要素-PICO(Medical Writing Works作成)
Medical Writing Worksでは、生成Aiを活用した新しい教育コンテンツの開発を試みており、その第1弾として、「ウェブ上で展開する臨床カンファレンス」をコンセプトとした症例検討を月に1回のペースで連載いたします。今回の症例検討は「糖尿病を患う独居高齢者、健康と生活をどう考える?」です。