病気に対する偏見や差別を、スティグマ(stigma)と呼ぶことがあります。スティグマの語源は、ギリシャ語のstizein(刺す)に由来すると言われており、尖った道具による印、穿刺、刺青の印、焼印を意味する言葉でした。
1600年代には、悪い行動のために人に付けられる不名誉または汚名となる印という意味でも用いられるようになり、善人と悪人を区別するための目印という意味合いが強まります。
病気に対するスティグマもまた、疾病というレッテルを張り付けることで、健康状態の異常と正常を区別し、両者の間に優劣の概念と差別感情を誘発するものです。
とりわけ精神疾患に対するスティグマは、予測不能な行動に対する恐怖や排除の感情、精神疾患に対する知識や理解の欠如から生まれる誤った信念を生み出します(Santos, et al. 2016.PMID: 28462343)。
このようなスティグマは、患者の社会的排除を促進し、自尊心や生活の質を大きく低下させる要因となります。
一方で、社会的に支持を集めている著名人が、自身が患っている病気をオープンに語ることで、スティグマが緩和され、適切な医療サービスの推進と公衆衛生の向上に寄与できる可能性があります。
今回の記事では、精神疾患に対するスティグマと、著名人による病気の語りがもたらす公衆衛生上の影響を多面的な視点から考察してみたいと思います。