軽度の火傷は、日常生活でも遭遇する頻度の高い健康問題(怪我)といえます。筆者も先日、カップラーメンを作ろうと、カップにお湯を注いだつもりが左手にお湯がかかり、軽い火傷となってしまいました。火傷が表皮の下の真皮に及ぶと、水疱が生じることもあります。このような状態の火傷を、浅達性II度熱傷と呼びます。
火傷の治療を目的に、OTC医薬品を買い求めに来るお客さんの多くは、浅達性II度熱傷だと思われます。火傷がさらに皮下の深部に達している深達性II度熱傷や、さらに重症度が高いIII度熱傷では、医療機関の受診がすすめられることでしょう。
むろん、浅達性II度熱傷であっても、疼痛の度合いや水疱の大きさによっては、医療機関の受診を勧めるべき症例は多いかもしれません。一方で、医療機関を受診する余裕がないといった理由で、OTC医薬品を希望される方も少なからず存在します。
水疱を認める火傷において、水疱が破裂した後に懸念される健康問題が皮膚感染症のリスクです。そのため、例えばドルマイシン🄬軟膏のような抗菌薬が配合された外用薬の販売を考慮することも多いと思います。実際、同薬の効能効果には、「外傷・火傷等の化膿予防及び治療」と明記されています(ゼリア新薬工業. ドルマイシン軟膏製剤添付文書)。
一方で、表皮には常在細菌が存在しており、完全な無菌状態にすることは困難です。実際のところ、抗菌薬を配合した外用薬を塗布した場合に、皮膚感染の発症リスクをどれほど下げることができるのでしょう。
今回の記事では、火傷や外傷に対する局所抗菌薬(抗菌薬を配合した外用薬)のエビデンスを整理したうえで、同薬の販売実務におけるロジックを考察します。